可能な限り歯を残す治療(エクストルージョン)

こんにちは。クレア歯科クリニック、院長の平岡です。
本日は、歯を残すための特殊な治療をお見せします。

上の表題の写真は、かぶせ物の下の根っこが折れてしまって、かぶせ物といっしょにとれてしまった状態です。

折れた深さを測ってみると、歯茎のへりから深さ3mm程度あります。通常、かぶせ物を歯茎の下に入れていい深さは、教科書的には0.5mm程度と言われていますので、かなり深いです。このままかぶせることも物理的には可能といえば可能なのですが、将来的な歯茎の炎症(それに伴う咬合時の痛み)、それによる骨の吸収、その後の歯肉の退縮等、審美的にも機能的にも悪影響が懸念されますため、一般的には、特に保険治療に限定した場合は、このような場合は抜歯をすすめられる可能性が高いかと思います。

しかしながら保険外の治療であれば選択肢が残されてないわけではありありません。歯を矯正により引っ張り出し、折れた部分を浅くしてからかぶせ物を行うことができます。根が短くなるというデメリットはありますが、歯茎の状態を長期的に安定させることが可能になります。

初日はとりあえず、両隣の歯に接着する形で仮歯を作りました。
次回から矯正の開始です。


次回、一旦仮歯を外し、作っておいたフックを歯に接着します。

また、両方の歯に、外から見えないようにワイヤーを仕込んだ仮歯を接着します。


ワイヤーとフックの間に、矯正用のゴムをかけます。フックの先端と上のワイヤーの間は、引っ張り出す高さの目安の約3mmにしてあります。

2週間後です。かなりフックとワイヤーの間隔が狭まってきています。その分歯が出てきているという事です。

 

またゴムをかえて2週間ほど。上のワイヤーに触れる程度まで出てきました。最初の状態より、歯がだいぶ見えてきているのがわかります。

ここで、固定をしていきます。
まずは表側の仮歯の下半分を削ります。そして歯と仮歯の間をレジンで埋めてつなげます。この時、歯茎がきれいに治るように、段差や隙間なく、清掃できるような形にするのが腕の見せ所です。

歯間ブラシを使ってもらえるように、少し歯と歯のあいだは隙間をとって固定(仮歯)完成です。


裏もこのように食べ物などが詰まらないように埋めてあります。


一か月半たちました。歯茎の状態はだいぶ良くなってきています。仮歯の形を修正して、歯茎がほかの歯ときれいなラインで並ぶように調整していきます。

そのまた1か月半後です。少し歯垢がついている部分もありますが歯肉の形はだいぶ良くなっていますので、最終的なものを作り始めます。ここからは、もう通常の治療と一緒です。
グラスファイバーで土台を作り、かぶせ物の型取りをします。歯肉はきれいな形になり、炎症もありません。言われなければ引っ張り出したとはわからないでしょう。

最終的なセラミックを仮付けし、一か月後です。少し歯と歯の間に汚れはついていますが、歯茎のラインは両隣の歯茎のラインとほぼ調和した状態になり、特に炎症もありませんので、この後これを外して最終的な接着剤で接着しました。

むしろ右隣の歯の歯茎が少し炎症で紫っぽくなっているのが気になります。この歯は少しぴったり合ってないので歯茎の状態が少し悪いですが、患者さんは治療を希望されていないので、このまま経過観察をしていきます。

 

このように、保険の範囲では対応できないような状況でも、自費治療も選択肢にいれると、歯を良い状態で残すことが可能になる場合もあります。

不幸にも抜歯が必要と言われたような場合でも、まずは担当医に相談してみたり、必要であればセカンドオピニオンなども受けられることをおすすめします。

東京都 杉並区 阿佐谷北 クレア歯科クリニック

院長 平岡 達

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